片岡さん
日銀の金融政策正常化、最短なら来年半ばに判断も-片岡前審議委員
伊藤純夫、藤岡徹
2022年9月13日 6:00 JST
日本銀行の審議委員を7月に任期満了で退任した片岡剛士氏は、最短なら来年半ばに日銀が金融緩和政策からの正常化に踏み出すべきかを判断するタイミングが訪れる可能性もあるとみている。
片岡氏は9日のインタビューで、原材料高の価格転嫁の動きが継続して「2、3%の名目賃金の引き上げが続く見通しになれば、賃金上昇を伴う物価上昇が確認できる可能性はある」と述べた。正常化は「早めの判断が行われる場合が来年の半ばだ」との見方を示し、「ナローパスであり、奇跡に近いと思う」とも話した。
「原材料価格の上昇を企業が価格に転嫁し始め、その結果として賃金が少しずつ上がる好循環が緩やかながらも見えてきている」と指摘。「局面変化が起きている。デフレ感覚のような、従来の感覚が大きく変化する期待はある」と語った。
8月にPwCコンサルティングのチーフエコノミストに就任した片岡氏は、金融緩和に積極的なリフレ派。長短金利を引き下げることで金融緩和をより強化することが望ましいとして、金融政策決定会合では反対票を投じ続けてきた。
消費者物価の前年比上昇率は7月まで4カ月連続で日銀が目標とする2%を上回り、伸び率を拡大している。日銀は現在の物価上昇は持続的ではないとして緩和継続を主張。2022年度に平均2.3%に高まるが、23年度は1.4%、24年度は1.3%に鈍化する見通しを示している。
片岡氏は、携帯電話通信料の値下げの影響が完全にはく落する秋以降は3%を超えることは容易に予想できるが、「黒田体制の下では政策変更はない」としている。来年前半に日銀見通しのように物価の下落基調が鮮明になるかどうかを金融政策運営の重要なポイントに挙げた。
約24年ぶりのドル高・円安については「本質はドル高であり、日本の当局が円安を起こしているわけではない」と説明した。日銀の利上げで解決できる問題ではないとし、「金融政策を転換すれば足元の景気の悪化につながりかねないリスクが顕在化してしまう」と懸念を示した。
外需に不安感が出ている中で「財政で内需をしっかり支えることが一番の起点になってくる」と述べた。政府が10月に策定する予定の総合経済対策は、「需給ギャップが現在16兆-17兆円であり、そこが一つの基準になる」としている。
来年4月就任の次期総裁がすべきことは「黒田レガシーをしっかり受け継ぎ、2%の目標を早期に達成・安定化して次のフェーズに適切な形で移ることだ」と言明。物価目標が達成できないからとあきらめる人は望ましくないとし、目標引き下げは「敗北を意味し、経済浮揚に完全に期待が持てなくなってしまう」と語った。
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