丸投げ
下記の日経の記事には、1社受注じゃなく、業務別に分割受注を促進したほうが日本企業の参入余地もありコストの面でも競争が働くとしていますが、デジタル庁の意向の方が正しいと思います。1社に丸投げ。全責任を負わすことで責任の所在やあいまいさが省けます。メガクラウドに参入していない以上、日本企業には無理な話ですから、何のための1社受注なのか前提を理解できていません。日経は専門スタッフもアホばかりです。
政府クラウド、米4社が参入 国内企業が応募できない壁
2022年10月27日 5:00 [有料会員限定]
デジタル庁は日本の行政機関が共同利用する「ガバメントクラウド」について、2022年度に調達先とする4社を10月3日に公表した。新たに採択された米マイクロソフトなど2社を含め、いずれも「メガクラウド」とも呼ばれる米国の大手IT(情報技術)企業が占めた。
河野太郎デジタル相は同日の会見で、「事業者が2社から4社に増えたことで、(ガバメントクラウドの)品質や競争力が向上していくだろう」と利用拡大に期待を示した。応募した4社がすべて採択されており、国産事業者を含めてほかには応募がなかったことも明らかにした。
今回の調達では、デジタル庁は21年度に提示した技術要件を一部見直し、過剰だともいえた要件の中には削除したものもある。それでも国内勢は応募できなかった。立ちはだかる壁はどこにあるのか。
マイクロソフトとオラクル新規参入
22年度に調達先として選ばれたのは、新規に参入するマイクロソフトと米オラクル、21年に続いて採択された米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と米グーグルの計4社である。デジタル庁が利用するリージョン(データセンターの所在地域)は日本国内にあり、事業者によっては日本法人が契約相手になる。
ガバメントクラウドは、パブリッククラウドサービスを複数組み合わせて構築する「マルチクラウド」とする点に特徴がある。マルチクラウドを実現するため、デジタル庁がサービスに求める要件や基準を調達仕様書として示し、これらを満たすサービスの提供事業者すべてと契約を結ぶ方式を採る。
デジタル庁の担当者によれば、今回の調達では21年度に約350あった要件から追加や削除を含めて30項目程度の要件を見直した。
その際に参考にしたのは「(国内外の事業者や専門家ら)外部との意見交換や、報道も含めたガバメントクラウドに関する技術的な見解」(デジタル庁の担当参事官)だという。ただし「セキュリティーや品質、実際に用いる機能など、求める技術水準そのものは変えていない」(同)ことも強調している。
ガバメントクラウドへの参入希望を表明し、ソフトウェア協会会長として政策提言をまとめる立場にあるさくらインターネットの田中邦裕社長も「デジタル庁とは意見交換の機会もあり、事業者など外部とのコミュニケーションを心掛けていると感じる」と話す。田中社長もインフラとしての技術水準を下げるべきでない点と主張し、デジタル庁の方針を歓迎する。
実際に今回の調達仕様書を21年度と比べると、クラウドから利用できる人工知能(AI)の機能を大きく絞り込んだ点が目立つ。21年度は自動翻訳などさまざまな機能が羅列されていたが、22年度は実際に使う可能性があるものに絞り込んだとみられる。
運用支援などを定型化した「マネージドサービス」についても、21年度にあった「直近1年間でリリースした新機能数が100以上ある」など数を求めた要件は削除した。必要とするマネージドサービスは別に定義しており、単純に数字の多さを指定する意義は薄いと判断したようだ。
ガバメントクラウドの技術要件は、AWSなど米メガクラウドの仕様や実態をそのまま踏襲した仕様が少なくないとの指摘もあった。さくらインターネットの田中社長は「そのような面は薄まったように見える」と指摘する。
サービス1社で完結、メガクラウドの独壇場
だが、さくらインターネットを含む国産勢は今回も応募できなかった。NTTデータやNECは21年11月の日経クロステックの取材に対し「要件が当社のサービスと合えば応募を検討する」などと意欲を見せていたが、22年度もデジタル庁の要件を満たせなかったとみられる。
国産勢にとって引き続き高いハードルになったのが、マネージドサービスに関する数多くの要件をほぼ維持したことだ。22年度で330強ある要件の大半は必要とするマネージドサービスの仕様に充てている。対象はサーバーやネットワークなどのシステム基盤の自動化などにとどまらず、ミドルウエアや開発、アプリケーションも含めた運用支援まで、20近い分野で必要とする機能を定義している。
具体的には、プログラミング技術を駆使して運用を自動化するIaC(インフラストラクチャー・アズ・コード)や仮想化のコンテナ技術、開発環境、アプリケーション統合の機能などが含まれる。例外的に要件の数を絞り込んだAIも機械学習の統合開発環境を提供することは引き続き求めた。
つまりシステム基盤だけでなく、開発と運用のプロセス全体を支援する機能もセットで求めている。さらに、デジタル庁はこれらの機能を1社単独で提供するという条件を今回も維持した。複数の企業が協業したり分担したりして提供することは想定していない。米大手は、運用支援などクラウド関連の技術を企業買収も組み合わせて充実させている。必然的に垂直統合型で機能をそろえる米国のメガクラウドが強みを発揮する。
さくらインターネットの田中社長は「デジタル庁がガバメントクラウドの調達を通じて、開発・運用のプロセス全体を最新のものに変えようとしている姿勢はよく理解する。ただし競争を促すため、協業による入札や分割調達なども検討してほしい」と提言する。
分割調達であれば、サーバーなどのITインフラを提供するIaaS(イアース)と関連サービスに限って参入するといったことが可能になる。価格競争も促進できそうだ。実際にIaaSの料金を比べれば、国産勢とAWSの料金は同等か逆転しているケースがある。
また4社はいずれも米ドルでの料金を基準にして日本での提供料金も決まる。デジタル庁は包括契約で大口の価格交渉もできる立場だが、年次で見れば為替変動のリスクは負う。垂直統合型のクラウド技術による新たな囲い込みが起こる懸念もある。
マネージドサービス以外でもメガクラウドの実態を踏襲しているとみられる仕様はインフラなどの要件にもある。例えば、リージョンを冗長化するために構成する「ゾーン」については、複数のデータセンター(DC)で構築するという2階層での冗長化を21年度と同じく求めている。このDC配置はユーザー数が多い米大手クラウドが結果として満たす場合が多く、ユーザーに保証はしていない事業者もある。
とはいえ、このDC配置の要件は、国産勢も容易にクリアできるとみられる。NTTデータやNEC、富士通なども多数のデータセンターを持っている。さくらインターネットの田中社長は「棟の構成を工夫したり、別の棟を借りたりするなど数億円の追加投資で実現できる。さほど難しい要求ではない」とも指摘する。
つまりミドルウエアや開発運用のプロセスを支援するマネージドサービスの提供は難しくても、IaaSの機能に限れば国産勢が参入できる可能性は十分にある。
このまま1社での完結でメガクラウドからの調達を続けるのか。それともIaaSのようなインフラと、開発や運用の支援技術とで分割調達も取り入れて、価格を含めた競争をより活性化するのか。ガバメントクラウド調達の課題が残った。
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