同意
22日に書いたことを高橋教授が丁寧に解説してくれています。
不思議なことに、日本では昼行燈が好まれます。さっぱりわかりません。「波風立てるな」。昔からよく言われました。日本はボンクラが好きなようです。
2.5兆円の補正予算で足りるはずがない 岸田首相が本当になすべき経済政策を教えよう
政府が過小推計する「GDPギャップ」
4月22日の参院本会議において、岸田首相は補正予算案の編成について対応を検討する考えを示した。自民・公明両党の申し入れを踏まえたものだ。
遡ると19日、自民・公明・国民民主3党はガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の発動について先送りを決めた。そこで自公両党は補正予算案を編成するかどうか協議したが、先送りになっていた。しかし、物価高騰への緊急対策に合わせて補正予算案を編成するよう政府に求めることで自公は21日に合意し、それを受けて政府が動いた恰好だ。
4月26日の緊急対策では、財源は22年度予算の予備費を活用し、使用した予備費の穴埋めなどに補正予算を充てる方針で、2.5兆円規模の補正予算の成立を今国会で図るという。ガソリン価格の上昇については、当面は石油元売り会社への補助額を増やし原油高に対応するという。
今回のロシアによるウクライナ侵攻では、エネルギー価格上昇や原材料価格上昇が懸念されている。しかしながら、本コラムで強調してきたように、国内には供給が需要を上回る「GDPギャップ」が相当額ある。筆者は2022年1-3月期で30兆円程度以上と試算しており、2021年10-12月期で約17兆円とする政府の試算は過小推計だと考える。
GDPギャップにより、エネルギー価格や原材料価格の上昇が最終消費価格に転嫁できないことへの対策は比較的シンプルだ。それらの価格上昇を抑えるために、ガソリン税や個別消費税を減税することだ。
その一方で、値上がり分を価格転嫁し、その悪影響を吸収するために、GDPギャップを解消するくらいの有効需要を作る補正予算が必要だ。要するに、減税財源を含んだ大型補正予算が最良の経済対策になる。
いまウクライナ危機を巡り、防衛費の増額が議論になっているので、これを補正予算でやってもいい。有効需要を作るとともに、国際情勢の変化に対応する一石二鳥の策だ。
現在の予備費(最大5兆円)の範囲ではGDPギャップを埋めるにはほど遠い。となると、半年後には失業率上昇という代償を払うことになる。需要が弱く、エネルギー価格と原材料価格の上昇分をなかなか転嫁できずに経営困難に陥る企業が多く見られるだろう。
もはや「検討」している場合ではない
ウクライナ危機に対抗する経済政策を立案するのは簡単だ。しかし、それを実行する今の政治状況はなんとも情けないものだ。
今国会で補正予算が編成される方針になったことは、やらないよりはましだが、2兆5000億円で予備費の積み増し程度の規模では、効果も限定的なものにとどまるといわざるを得ない。
岸田首相は、結論を出さずに「検討する」というので、ネット上で「検討使」と揶揄されてきた。今回も、トリガー条項発動について、伝家の宝刀「検討する」が行使された。「検討に検討を重ねる」「さらに検討するかを検討する」など、「検討する」の無限ループにならないように期待したいところだ。
大規模な補正予算編成についても、今は検討するときではなく、実行すべきときだ。
現在の経済状況は、コロナ禍からなかなか経済が立ち直らない中、ロシアによるウクライナ侵攻がおこり、世界経済が低迷している。日本への影響はエネルギーや特定原材料不足、それに伴いエネルギーや特定原材料価格の上昇だ。それに伴う世界経済の見通しについては、IMFは次のようにみている。
ロシアとウクライナはマイナス成長。インフレ率も高く、いわゆるスタグフレーションの状態だ。そのあおりで世界経済も成長率が低下する。
こうした世界経済の変化に対し、日本に求められるマクロ経済政策とミクロ経済政策はなにか。それぞれ分けて考えてみよう。
見送られた消費税軽減税率
前者のマクロ対策は、本コラムで書いてきたように基本はシンプルだ。GDPギャップを埋めるように有効需要を作り、失業率を高めないようにすることだ。完全雇用を達成するためのGDPギャップについて、筆者は2022年1-3月期で30兆円以上と推計している。
この観点から、補正予算が必要で、その真水は30兆円以上だ。これを怠ると、社会的に無意味な失業者が発生する。
今国会における補正予算について、2.5兆円と報じられた。補正予算でなく予備費執行で対策をやり過ごそうとしている自民党と補正予算が必要との立場の公明党の間で、政治的妥協が2.5兆円という数字のようだ。正直言って、規模がヒト桁違う。
また、世界から見れば日本の防衛費はGDP1%と、世界150国中121位と先進国の中ではかなり低い。この増額を今国会の補正予算で手当てしてもいい。昨年の補正予算で防衛費の補正をしたこともあるのでその例にならえばいい。
しかも、エネルギーや特定原材料価格の上昇に対しては、個別物品での減税が必要だ。具体的には、ガソリン税減税や特定原材料に対する消費税軽減税率の適用だ。これらは厳密にはミクロ対策であるが、いずれも岸田政権で今国会での成立はいずれも見送られるとされている。
さて、もう一つのミクロ対策はどうか。新型コロナで痛めつけられた業界対策も必要だが、それらはなかなか見えてこない。
新型コロナによる行動規制は、日本よりも人口あたりの感染者数学が多い欧米ではすでに撤廃されているのに、日本ではまだ継続されている。世界的にみればかなり奇異なもので、感染症法上の位置付けを2類相当から5類への引き下げなどの見直しが必要だが、その動きはない。
また、ウクライナ危機でエネルギー価格が上昇するにあたり、省エネ対策が必要だ。建築において、耐熱対策のための誘導政策はすぐにでも可能だが、その動きは鈍い。
エネルギーの供給対策では、日本のエネルギー自給率は世界で最低レベルだ。これをすぐに高めらることのできる施策は原発再稼働だ。海外からも、日本が原発再稼働すれば、世界のエネルギー環境が良い方向に変わるとも期待されているが、その動きはほとんど見られない。
欧州ではロシアへのエネルギー依存がネックになっているので原発もクリーンエネルギーに位置づけられているが、日本はその動きに逆行しているのだ。
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