原発

東日本大震災以降、原発反対に向いた民意ですが、社会の進歩に原子力は欠かせません。太陽は、常に核融合を繰り返しエネルギーを放出し、それが我々の地球へ命を吹き込んでします。原子力を突き詰めることこそが人間の命題だと考えること、そういう国策を否定すべきではないのです。無論いい加減な政策や電力各社の体質改善は言うに及びませんし、責任の所在は明確にして事を運ぶべきです。

下記は、新たな技術の話題です。世界のトップがここへ力を注ぐのは、必ず未来があると確信しているからです。



ゲイツ氏ら注目の核融合発電、京大発スタートアップ挑む

日経産業新聞

2021年5月15日 2:00 [有料会員限定]

核融合発電が世界で熱気を帯びている。水素を燃料にエネルギーを生み出し二酸化炭素(CO2)も出さない夢の技術に、世界でスタートアップが興り米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏らが投資する。日本は京都大学発スタートアップが名乗りを上げ、米ゴールドラッシュの「ジーンズ」のビジネスモデルで挑む。

「海外の複数の大型案件へ受注提案を繰り返している」。核融合のスタートアップ、京都フュージョニアリング(KF、京都府宇治市)の長尾昂代表取締役は目を輝かせる。拠点は京大宇治キャンパスの小さな研究室だ。世界有数の核融合発電の研究者である京大の小西哲之教授と外資系コンサル出身の長尾氏は2019年10月、KFを設立した。


KFは核融合炉に不可欠な消耗の激しい部品の開発と生産に特化する。炉の開発に比べ初期投資が安く、炉の運転前から売り上げがたつ。1900年代半ば米国で金の採掘者がこぞって履き、定着したジーンズから着想した。大型の資金調達の計画も進む。

消耗部品に着目

看板商品は炉内部で中性子と反応して熱エネルギーを取り出す「ブランケット」。消耗が大きく2~3年で交換が必要だ。KFはシリコンカーバイド製の1メートル角のブロックを数百個使い組み立てる。素材合成、設計技術が基本的な競争力だ。開発に必要な真空チャンバーなど京大の設備も使える点を強みにする。

プラズマを加熱する「ジャイロトロン」やプラズマ反応で生成される不純物を排気する機能を持つ「ダイバータ」も手がける。双方とも2~3年で交換の必要がある。一連の部品を開発できる人材は世界でも少ない。生産は重電大手の下請けで実績のある中小企業に委託する。

19年5月、小西氏は京大のベンチャーキャピタルが催した起業家向けの会合で、核融合発電が持つ可能性について語った。「面白いでかいことを言う人がいるな」。参加していた京大大学院出身の長尾氏は新電力にもいた経験もあり心にひっかかった。「結構ありかもな」

「論文ばかりではおもしろくない」

19年6月に小西氏は英国の学会に出席して海外の研究者仲間と話すうち、消耗部品に特化するアイデアがひらめいた。「論文ばかりではおもしろくないよね」。起業を決断した。京大ベンチャーキャピタルの仲介で、小西氏と長尾氏が組むことになる。

長尾氏は現在は投資家の対応を担当し、技術や営業は小西氏が受け持つ。20年末、小西氏は米国の業界団体フュージョン・パワー・アソシエイツのオンライン会議でスピーチすると複数のコンサルティングの依頼が舞い込んだ。同時期、長尾氏はコーラル・キャピタル(東京・千代田)などから1億2千万円の出資を引き出した。

KFは21年4月からスタッフを4人から15人に増やした。学者や技術者が中心で世界を相手にする体制を整える。コーラル・キャピタルの世古圭シニアアソシエイトは「2倍、3倍ではなく100倍、数千倍のリターンを期待する」と話す。

海外では核融合発電炉を開発する米TAEテクノロジーズが21年4月8日、投資家から約300億円を追加調達したと表明し、注目を集めた。同社には米グーグルも出資しており、累計の調達額は約960億円に達した。

ゲイツ氏やベゾス氏が出資

核融合発電の企業は世界に数十社ある。ゲイツ氏が出資するコモンウェルス・フュージョン・システムズ(米)、米アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏が出資するゼネラルフュージョン(カナダ)など。脱炭素の潮流の中、注目度は増す一方だ。

「画期的な技術に到達した」。TAEテクノロジーズは燃料をセ氏5000万度に熱し安定的にプラズマを生成したことも明らかにした。実際の発電は1億度以上が必要だが「着実なマイルストーンだ」と誇る。資金調達と同時に技術開発も進む。

核融合発電はいわば太陽を地上で再現する。重水素や三重水素をセ氏1億度以上に加熱し、分子を陽イオンや電子に分離しプラズマの状態にする。原子核を秒速1千キロメートル以上で動き回らせぶつかり合わせて核融合反応を引き起こし、エネルギーを取り出す。1グラムの燃料で石油8トン分のエネルギーを生む。重水素は海水に含まれ安価で豊富だ。

南仏で進む国際プロジェクト

フランス南部のサン・ポール・レ・デュランスでは広大な敷地を重機が所狭しと走り回り、国際熱核融合実験炉(ITER)の建設が進む。運転開始(ファーストプラズマ)は25年、核融合反応の開始は35年を予定する。米国と中国、日本、欧州連合など7つの国と地域が協力する。各国が分担して部品をつくって納める。ファーストプラズマまでの現在の進捗は約70%だ。ITER機構の大前敬祥首席戦略官は「核融合発電はエネルギーの地政学を変える可能性がある」と語る。

核融合発電はまだ世界の誰も実現してない。炉は兆円単位の建設費がかかり技術的にも実現は50年ごろとされてきた。しかし3月まで国際原子力機関(IAEA)で核融合スタートアップの支援を担当した武田秀太郎氏(京大特定准教授)は、「宇宙開発のように民間がイノベーションを起こす」と語る。トップランナーの1社、TAEは10年後までの実現を目指す。後押しするように武田氏によると2000億円超の投資が関連企業に流れ込んでいる。

(藤野逸郎、張耀宇、村上由樹)

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