真逆

アメリカの経済状況と日本のそれは真逆です。次々と利上げしてきたFRB。それに呼応して高まった失業率。日本なら政策で失業を何とかしようとか、補償とか、訳の分からない経済音痴の世辞化が言い張るのですが、アメリカでは『どんどん失業率を上げよう!』となってきています。今より失業率が上がればFRBは金利を下げ金融緩和せざるを得ず、労働問題は、更に労働市場の流動性を上げようとします。

これ、正しい判断です。まず、役人が介入しません。政府や役人が介入しないことが大前提。日本の政策はその時点で『汚れ汚臭を放っています』。政治も役人も『タダ』じゃないのです。お金がかかります。例えば、ガソリン高騰問題でも、減税すればいいだけなのに業者へ補助金。政治の『やった感』の演出と、役人の差配する権限の強化。こういう発想は共産主義的指導で国力を根腐りさせます。

日本の雇用関係は守られ過ぎているから流動化しないのです。もっと雇用解除を簡単にできるようにすれば労働力は流動化します。一次的に失業した国民には補填したら済むことです。政策が弱者救済に向いてはいけません。政策は政策、救済は救済。全く別なものをパッケージするから支離滅裂な話になるのです。


米失業率上昇を祝うべき時

インフレ率が低下し低水準でとどまるためには労働市場の緩和が必要

「仕事を得るのは難しい」と答えた米消費者の割合は顕著に上昇した

2023 年 9 月 8 日 09:02 JST

 失業率の上昇を祝うべき時はめったにない。だが今はその時だ。

 1日に発表された8月の米失業率が3.8%と1年半ぶりの水準に上昇したことは、労働市場が顕著に軟化したことを示す最近の兆候の一つだ。インフレ率を2%まで引き下げてその水準で維持するための米連邦準備制度理事会(FRB)の取り組みにとって、これは通るべき道だ。リセッション(景気後退)を確実に回避できるほどではないが、一助にはなる。

 なぜ労働市場がそれほど重要なのだろう。どのみちインフレ率は、労働市場が軟化せずともすでに低下している。

 つまるところ、答えは総合インフレと基調インフレの違いにある。総合インフレ率(物価上昇率)は2021年初めの2%未満から22年6月には9.1%まで上昇した。要因となったのは、サプライチェーン(供給網)の混乱、政府の現金給付とロックダウン(都市封鎖)でモノの購入が増えたこと、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油高だ。今年に入り、総合インフレ率は4%を下回った。要因は、原油価格と航空運賃の下落、家賃の伸び鈍化、健康保険料の引き下げだ。

 問題は、こうした変則的な影響を全て取り除いた基調インフレ率はどうか、だ。これは主に総需要と総供給の差で決まり、これを最もよく表す指標は労働市場だ。簡単に言えば、たとえインフレ率が2%まで下がっても、労働市場が余りにひっ迫して賃金がインフレ率の2%と釣り合わないほど上昇すれば、インフレ率は2%にとどまらない。

確かに、8月の失業率上昇は1カ月分のデータに過ぎず、夏の労働力人口の急増を反映しているとしてこれを重視しないエコノミストもいる。

 いつもならこうした見方に大いに賛成するところだが、今回は最もシンプルな説明が正しそうだ。実際、失業率の素晴らしさはそのシンプルさにある。たった一つの数字で、経済のたるみは解消しつつある(=インフレ圧力上昇)のか、それとも増大している(=インフレ圧力解消)のかを教えてくれる。

 3カ月平均で見ると、失業率は4月以降徐々に上昇している。この傾向は、労働市場の緩みを示す他の兆候を裏付けている。政府調査でも民間調査でも、求人件数が急減した。

 米国の雇用は伸びており、軟化しているとの説明とは矛盾する。就業者数は8月に18万7000人増加した。これは定常状態の経済で人口が増加した場合のおよそ2倍の増え方だ。トラック運送会社の倒産やハリウッドのストライキがなければ、もっと増えていただろう。

だが、この数字にはいまだ残っている新型コロナウイルス禍の影響を加味する必要がある。TSロンバードの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏は、小売り、宿泊・飲食サービス、医療・福祉サービスを「埋め戻し」部門と呼ぶ。初期のロックダウンの影響を最も受け、人手を通常の水準に戻すため現在も雇用を続けている業種だ。雇用全体に占める割合は合わせて約3分の1だが、ここ3カ月は民間部門の雇用増の7割近くを占めた。

 民間部門の基調的な雇用の伸びを見るには、この「埋め戻し」部門を除く必要がある。すると、8月の民間部門の就業者数はわずか5万2000人増で、3カ月間の平均は月2万4000人増となる。11万3000人増だった5月からは急減だ。ブリッツ氏はこれを「景気後退前の傾向とそっくり」と指摘した。

 世間は気付いている。全米産業審議会(コンファレンスボード)によると、4月以降、「仕事を得るのは難しい」と答えた消費者の割合は顕著に上昇し、「仕事はたくさんある」の割合は低下した。

 労働市場を見るとたるみは増大しているが、これは国内総生産(GDP)の動向と矛盾している。4-6月期の米GDPは前期比年率換算で2.1%増と好調だった。個人消費が大きく伸びており、7-9月期は3%増を上回る可能性がある。成長率は長期の潜在成長率である1.8%を大きく上回っており、インフレ圧力の高まりを示唆している。

ただ失業率とは違い、GDPは額面通りに受け取るべきではない。GDPは2通りの方法で測定できる。政府、消費者、企業、外国人による財・サービスへの支出を合計すると、おなじみのGDPが算出される。一方、これらの財・サービスを生産することで得られた賃金、利潤、配当、賃料等を足すと、それほどなじみのない国内総所得(GDI)が得られる。インフレ調整後のGDPは6月に前年同月比2.5%増加したのに対し、GDIは0.5%減少し、通常より差が開いた。

 一因はFRBの減益かもしれないが、パイパー・サンドラーのチーフグローバルエコノミスト、ナンシー・ラザール氏は、GDIのこの傾向は多くの企業が販売不振を報告していることと整合していると指摘する。同氏のメモによると、米食品大手キャンベルスープは値上げを実施。販売量は落ち込み、今年に入って在庫が大きく減少した。経済全体で企業の販売量が減少すると、「時間を置いて雇用も減少する」という。

 両者の不一致に向き合うなら、差を見ないことだ。足元で前年比GDPと同GDIの平均は1%増で、経済のたるみ増大と理屈が合う一方、景気後退には当たらない。さらに、過去の就業者数と所得が下方修正されたことは、成長が誇張されていた可能性を示している。

 つまり、労働、生産、企業のデータを総合すると、経済のたるみが戻りつつあることがわかる。インフレ低下にとって必要な条件だ。これが景気後退を伴わずにインフレ率が2%まで低下する「ソフトランディング(軟着陸)」で済むかどうかは、二つの動向にかかっている。

まず、インフレ率がこのまま2%まで下がり続けるのかどうか。もし3~4%の間で停滞すれば、FRBはさらに金利を引き上げざるをえなくなり、最終的に景気後退を招きかねない。

 賃金はインフレの直接的な誘因ではないが、物価や生産、経済に関する何百万人もの労働者と雇用主の総合的な判断を反映しているため、基調インフレの指標としては信頼性が高い。ゴールドマン・サックスがまとめた賃金の前年比上昇率は、昨年秋の5.8%から今年春には4.8%に低下し、現在は4.4%だ。インフレ率を2%にするほど低くはないが、そこへ向かってはいる。

 それから、どの景気後退もはじめはソフトランディングのように見える。8月に失業率が緩やかに上昇したのは喜ばしいことだ。だが、さらに上昇するリスクはある。手放しにお祝いしていいとはいかなそうだ。

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