はあ?
この時期に、どういうつもりで書いた記事なのでしょうか。メルケルが辞めたからプーチンが攻めてきたんじゃなく、メルケルがロシアを見誤り続けたからプーチンが攻めてきたのです。プーチンとメルケルはロシア語でもドイツ語でも会話できる仲で、ドイツのエネルギー政策をロシア依存に傾斜させ続けました。そのツケがコレ。G7でトランプがメルケルにロシアに対する警戒を指摘した時、メルケルは鼻で笑ってあしらったそうです。
ドイツがメルケル首相だったらプーチンのウクライナ侵攻は防げた
3/8(火)
ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。既存の国際秩序を破壊したロシアを懲らしめるため、バイデン米大統領は厳しい制裁を科しているが、これにより西側諸国も経済的な打撃を受けるのは必至な情勢だ。
国際社会が大混乱の様相を示している状況下でトランプ前大統領は「自分が大統領ならウクライナ侵攻は起きなかった」と主張しているが、筆者は「ドイツがメルケル首相だったらこの惨事は防げたのではないか」との思いを禁じ得ないでいる。 長期にわたりドイツの首相を務めたメルケル氏は昨年12月に政界を引退したが、ロシアとウクライナの間の関係を安定化させる最も重要な取り決めである「ミンスク合意」の生みの親だった。
鈍かった調停者
2015年2月に成立したミンスク合意は単なる停戦協定ではなく、「ウクライナ東部の親ロシア派支配地域に幅広い自治権を認める特別な地位を与える」という取り決めが含まれていたことから、ウクライナは当初から不満を抱き、その履行を渋っていた。 2014年にウクライナに親米政権が誕生して以来、米国は3000億円にも上る軍事支援を行ってきた。これによりウクライナは欧州地域有数の軍事大国に成長し、東部地域の軍事バランスも政府軍が優勢になったことから、ゼレンスキー大統領は昨年1月「ミンスク合意を履行しない」と宣言した。 これに対し、ロシアは「ウクライナがミンスク合意を破棄して武力解決を試みようとしている」と警戒、昨年3月からウクライナ国境沿いに軍を増派して圧力をかけていた。 ロシアの一連の動きは、欧州に対して「ウクライナがミンスク合意を履行するよう促してほしい」とのメッセージだった可能性が高いが、調停者であるドイツやフランスの反応が鈍かったと言わざるを得ない。 ようやく事の重大さに気づいたフランスとドイツの首脳は今年2月に入り、ロシアとの交渉に積極的に乗り出したが、「時既に遅し」だった。メルケル首相だったらもっと早いタイミングでモスクワに飛び、プーチン大統領に対し「ミンスク合意がロシアにとっても最も有利な選択肢である」ことを説得し、ウクライナやその背後にいる米国には強く自制を求めていたに違いない。 マクロン大統領はメルケル氏に代わってロシアとの交渉を精力的に行ったものの、ミンスク合意成立時の当事者ではない。その後、ウクライナ東部の戦闘がむしろ激化したことから、ロシアは「ミンスク合意に頼っていては親ロシア系住民の安全を守れない」と判断した可能性が高い。
ウクライナ侵攻でドイツへの悪影響
プーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認し、「平和維持」を目的とするロシア軍を派遣する方針を決定したが、その真意は「国際社会は親ロシア系住民の安全をもっと考えてほしい」ということだったのではないだろうか。 だがロシアの思いを逆なでするかのように、メルケル氏の後継者であるショルツ首相は2月22日、ロシアとの新しいガスパイプライン(ノルドストリーム2)の認可手続きを停止すると発表した。 ノルドストリーム2については米国から稼働停止の要求が高まっていたが、メルケル氏はあくまで「民間事業である」として政経分離の姿勢を貫いてきた。ロシアとのガスパイプラインはドイツを始め欧州の安全保障に寄与するとの認識があったからだ。 冷戦の最中の1970年代、当時の西ドイツのブラント首相が主導する形で旧ソ連産天然ガスが西欧地域に供給されるようになった。西シベリアからの世界最長のパイプラインの名称は「ドルジバ(友好を意味するロシア語)」だった。その名称が示すとおり、天然ガスの供給者と需要者という互恵的な関係を通じて、ソ連と西欧の間に信頼関係が生まれた。「パイプラインの敷設が冷戦終結を導く要因の一つとなった」と言われているが、旧東ドイツで育ったメルケル氏はこのことを肌で感じていたと思う。 冷戦終結後もロシア産天然ガスはパイプラインで欧州地域に安価かつ安定的に供給されてきた。メルケル氏が東京電力の福島原子力発電所事故を受け、国内の原子力発電を廃止する決定を行うことができたのも、2011年にノルドストリーム1が稼働を開始し、ロシアからの天然ガス供給が一層確実になったことが大きい。 ドイツの歴代指導者たちが「自国のエネルギー供給や安全保障に資する」と考えてきたロシアとのパイプライン事業をショルツ首相が台無しにしてしまったことは残念でならない。ロシアにとってもこの方針転換は驚きであり、24日からのウクライナ東部での特別軍事作戦を開始する際の有力な材料になったのではないかと筆者は考えている。 メルケル氏は2月25日「ロシアのウクライナ侵攻は欧州の歴史の大きな転換点になる」との認識を示したが、最も悪影響を被るのはドイツだ。 ドイツ経済が今年第1四半期に景気後退入りする中、ノルドストリーム2の稼働停止で安価なロシア産天然ガスの確保に支障が生じており、ドイツ人が最も嫌いなインフレは当分の間収まる気配はない。ドイツ政府は原子力や石炭火力の運転延長を検討しているが、泥縄の感は否めず、事態はますます悪化するとの不安が頭をよぎる。 ドイツ政府はさらに国防費を大幅に引き上げることを余儀なくされており、ドイツを巡る国際環境が今後急速に悪化する可能性が高まっている。 「たかがエネルギー、されどエネルギー」、エネルギーの安定供給を通した信頼関係がもたらす軍事紛争の抑止効果について、私たちは今一度肝に銘ずべきではないだろうか。 藤和彦 経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。
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