指摘され始めた

ロシアに対する日本と欧米との温度差が指摘され始めました。下記はWSJのコラムです。原油を100%他国に依存する日本のエネルギー事情を考えれば原発再稼働以外に手はないのはわかりきっているのですが、‟遅い”きしださんは表明しません。決断しない、考えない、何もしない...。



ロシア資源から離れない日本、欧米と温度差

引き揚げれば、中東への依存を高めかねないと日本の当局者は話す

2022 年 3 月 5 日 09:01 JST

 【東京】日本の政府と企業は今のところ、ロシアとのエネルギー開発事業からの撤退を見送っている。相次ぎロシアとの関係を断っている欧米企業とは対照的な動きだ。

 ロシアの石油・ガス開発への巨額の投資を打ち止めにすれば、日本政府にとっては、ロシアに深刻な打撃を与える強力な制裁措置となる。だが、日本の当局者は消費者への販売価格を押し上げ、中東への依存を高めかねないと話している。日本は原油供給の約9割を中東からの輸入に頼る。

 日本政府はこれまで、ロシアの銀行やウラジーミル・プーチン大統領に制裁を科す一方、ウクライナに1億ドル(約115億円)の支援を提供している。岸田文雄首相は3日、ロシアによるウクライナ侵攻は「決して許すことはできない」と言明した。

 ところが、欧米企業のようにロシア政府主導の石油・ガス開発投資から資金を引き揚げるかと問われると、岸田氏のウクライナに対する連帯は揺らいだ。

 岸田氏は「エネルギーの安定供給」について「最大限守るべき国益の一つだ」との考えを表明。他国の動きも見極める考えを示した。

 今回のウクライナ侵攻を受けて、ロシアとの関係をどこまで完全に断ち切るべきか、世界的に再考の動きが広がっており、日本も難しい決断を前にためらっている。ロシアに厳しい制裁を科している米国でさえ、国営石油大手 ロスネフチ や国営エネルギー大手 ガスプロム といったロシア政府系企業との取引を依然として一部認めている。

 日露のエネルギー協力の柱となるのがロシア・サハリン島沖の二大プロジェクトだ。一つが原油を生産する「サハリン1」で、株主にはロスネフチのほか、30%を保有する日本政府主導のコンソーシアム(企業連合)が名を連ねる。日本の経済産業省関係者によると、生産量は日量22万バレル。

 もう一つが「サハリン2」で、天然ガスを生産し、液化して海外の顧客に供給する。出資する 三菱商事 によると、日本は生産量の約6割を購入している。サハリン2はガスプロムが主導する。このほか、 三井物産 が12.5%、三菱商事が10%出資する。

 このほか、ロシアでは、北極圏やシベリア地方で行われている複数のエネルギー開発事業にも、出資や融資を通じて日本から資金が流れている。日本のエンジニアリング企業の参加も多い。

 日本は2021年に、ロシアから天然ガスの9%、原油の4%近くを調達しており、その大半がサハリンからの輸入分だった。

 ただ、ここ1週間に欧米企業による撤退が相次いでいることで、数十年かけてロシア事業を構築してきた日本の政府やサハリンへの出資者らの間には衝撃が広がっている。撤退した欧米企業は、もはやプーチン大統領が率いるロシアとは取引できないと言明している。

 サハリン1の操業主体(オペレーター)だった米石油大手 エクソンモービル は1日、生産を停止するとともに、ロシアへの新規投資を打ち切る方針を明らかにした。その前日には、サハリン2に出資する英石油大手シェルが撤退を表明していた。

 三井物産や三菱商事を含め、サハリン事業にかかわる日本の組織は、今後の対応を検討中だと説明している。いずれも撤退が選択肢だとは明言していない。三井物産は、投資や融資保証といったロシアに対するエクスポージャーが2021年末時点で40億ドル程度としている。その大半が天然ガス事業だという。

 こうした中、日本の経済界首脳からは、日本政府はこの段階で断念するには、ロシアの開発事業にあまりに巨額な投資を行ってきたとの指摘も出ている。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は、欧米企業に「『右に倣え』で日本企業がすぐにやめるべきだと思っていない」と述べている。

 一方、ロシアのエネ事業の主要な貸し手である日本政府系の国際協力銀行(JBIC)トップは、やや異なる趣旨の発言を行っている。前田匡史総裁はロシアによるウクライナ侵攻を受けて、事業を「このまま同じように続けることはあり得ない」と述べた。ただ、どのような変更が必要かは明言しなかった。

 日本はドイツなど一部の欧州諸国ほど、エネルギー供給でロシアに依存していないが、それでも撤退すれば痛みを伴うとアナリストは指摘している。

  ムーディーズ ・アナリティクスのエコノミスト、ステファン・アングリック氏は「日本はロシアからの供給減をオーストラリアからの調達でまかなおうとする可能性が高い」と指摘。その上で「価格の値上がりは日本が支払う輸入代金に加え、生産者および消費者物価を押し上げる見通しだ。そうなれば成長は鈍化するだろう」と述べる。

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