仮想通貨狂騒曲
リーマンショック以来、世界中で投資資金がだぶつき、なんでも投資の対象となっている近年の大きな動きに仮想通貨があります。やれチャイナが国家仮想通貨を導入とか、ビットコインが○○ドルとか騒いでいますが、前提条件は何一つ変わっていません。それは先進国の中央銀行が発行する紙幣があって初めて値がついているという事実です。要は、FRBやイングランド銀行、ECB,日本銀行が発行する通貨があって、その対象に仮想通貨があるだけですから、新しい金融商品に限りなく近づいている商品だということです。
下記の記事を読めばわかるように、仮想通貨には『発行主体』がありませんし、交換所もネット上ですから『所在』すらないのです。皆が騒いでいるうちは「セリが行われている市場」と同じで値が付きますが、セリが終われば値はつきません。仮に、現行の中央銀行券(紙幣)の信認を脅かすようなら規制対象になり、今よりある程度低い水準で落ち着くでしょう。
次世代通貨など、有り得ないのです。あくまで商品。
仮想通貨交換バイナンス、急成長に迫る規制の網
取引高は1日当たり760億ドル
2021 年 11 月 12 日 12:39 JST
世界で最も急成長を遂げている暗号資産(仮想通貨)交換所には本社も、正式な所在地もなく、事業を展開する国々で営業認可も得ていない。その最高経営責任者(CEO)は最近まで、自身の所在地について明らかにしてこなかった。
バイナンスは創業からたった4年でロンドン、ニューヨーク、香港の証券取引所を合体したものに匹敵する仮想通貨版の巨大取引所に成長した。データ提供会社クリプトコンペアによると、バイナンスが手掛ける仮想通貨の取引高は1日当たり760億ドル(約8兆6700億円)相当と、競合大手4社の合計額を上回る。
しかし、バイナンスを筆頭に仮想通貨業界が制約や規制をほぼ全く受けず、破竹の勢いで拡大する時代は間もなく終わりを迎えそうだ。
金融規制当局はここにきて、仮想通貨が金融システム全体に及ぼすリスクが高まっているとして懸念を強めている。イングランド銀行(英中央銀行)のジョン・カンリフ副総裁(金融安定担当)は10月、2008年のサブプライム住宅ローン危機を引き合いに出し、「金融システムの規制の行き届いていないところで何かがあまりに急激に拡大すれば、金融安定化当局は静観してはいられない」と述べている。
バイナンスは規制当局から最もにらまれている存在だ。足元では、十数カ国の規制当局が、バイナンスは未登録の取引所で多岐にわたるサービスを提供できる認可を受けていないとして、ユーザーに警戒を呼びかけている。
元幹部らによると、米証券取引委員会(SEC)はバイナンスの米国事業について調査している。バイナンスは多くの州で認可を受けている。SECは他国で展開しているバイナンスの事業との関連性など、同社の米国事業から詳しい情報の提供を求めている。一方、米司法省はバイナンスがマネーロンダリング(資金洗浄)をほう助していないか捜査している。元幹部の1人が明らかにした。司法省の捜査についてはブルームバーグが先に報じていた。
SECと司法省はいずれもコメントを控えている。
バイナンスにとって、米国市場は大きな試練として立ちはだかっている。バイナンスは向こう数年に米国事業「バイナンス・ドットUS」の上場を目指しているが、同事業の構築を任された元規制当局者は8月、就任からわずか3カ月で辞任した。
複数の元幹部は、バイナンスが設立された中国のプログラマーが米国事業のデータを管理できる状況にあるとして懸念を示している。ユーザーの個人情報が中国当局の手に渡る恐れがあるとして、トランプ前政権が米国内での使用禁止を目指した人気動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の二の舞いになりかねないと考えたという。
バイナンスの創業者で最高経営責任者(CEO)のジャオ・チャンポン(趙長鵬、44)氏はインタビューで、同社は規制当局の指示に従う必要があると述べ、これには適切な営業認可を得ることも含まれるとの認識を示した。
ジャオ氏はユーザーが信頼を寄せているため急成長できたとし、「われわれは非常にまっとうなビジネスを運営している」と述べた。とはいえ「世界全体における仮想通貨の利用は人口の2%足らず」とした上で、「残る98%の人々を呼び込むためには、当社が規制の対象になる必要がある」と語った。
ジャオ氏はこれまで、現地オフィスや本社を構えていることは時代遅れとして退けてきたが、規制当局が望んでいるとして、現在取り組んでいる最中だと明らかにした。ただ、どこかは明言しなかった。同社は8月、ウェブサイト上で、不正資金による利用を防ぐため、ユーザーに身元確認を義務づける方針を発表した。
バイナンスとバイナンス・ドットUSはSECと司法省の調査・捜査に関してコメントを控えた。双方は別の組織だと説明している。バイナンスの広報担当、ジェシカ・ジャン氏は「当社は世界各国の規制当局と協調して取り組んでおり、コンプライアンス(法令順守)の義務を真剣に受け止めている」と述べた。
バイナンス・ドットUSの広報担当、マシュー・ミラー氏は「データへのアクセスが顧客による適切な利用やパフォーマンスの改善、規制要件の目的のみに確実に限定されるよう強力に保護している」とコメントした。また米顧客のデータはすべて米国内のサーバーで保管されているとした。
各国の規制当局は、バイナンスが固定の所在地を持たないことに頭を悩ませている。誰が事業を監督しているのか、分からないためだ。親会社バイナンス・ホールディングスはケイマン諸島が登記先だが、ケイマン諸島の金融規制当局はバイナンスは登録されておらず、当地から仮想通貨取引所を運営する認可も得ていないとしている。広報担当は、バイナンスはケイマン諸島から事業を運営していないと話している。
ジャオ氏によると、バイナンスは世界各地に3000人の従業員を抱える。元幹部らによると、内部関係者は取引高や手数料収入を踏まえると、バイナンスが上場すれば、評価額は最大3000億ドルに上ると推定している。
上場が実現すれば、ジャオ氏には巨額の利益が手に入るだろう。同氏は、自身がバイナンスの筆頭株主だと述べている。
ジャオ氏はツイッター上で390万人のフォロワーを抱える仮想通貨業界のいわば「ロックスター」的な存在で、イニシャルから「CZ」として知られる。バイナンスの広報担当によると、ジャオ氏は以前、同社の警備スタッフから居場所に関する質問には答えないよう助言された。
今では居場所を明かしており、新型コロナウイルス禍にあった過去2年はシンガポールにいたとしている。
ジャオ氏は中国で生まれ、12歳の時に親とともにカナダに移住した。コンピューター科学を学んだ後、東京とニューヨークの金融関係の会社に就職した。元勤務先の1つであるブルームバーグでは、先物取引のソフトウエア開発を手掛けた。
2013年に上海で、ポーカーゲームの場を通じてビットコインについて初めて知ったというジャオ氏。銀行も当局の手も介さず、世界のどこでも使える分散型通貨という概念に魅了されたと話す。
その後、上海のマンションを売って(ビットコインで決済)、複数の仮想通貨スタートアップ企業に勤務。他のプログラマー集団とともに、2017年にバイナンスを立ち上げた。
バイナンスは英語表記のみの競合勢と一線を画すため、ウェブサイト上に9言語を追加。複数のトレーダーが「使いやすい」と評価するプラットフォームを開発した。
南アフリカやロシア、インドなど金融システムがそこまで発達していない国々を含め、バイナンスのユーザーは世界各地に拡大。半年程度で世界最大の仮想通貨取引所に成長した。ところが、当局との間ですぐに問題が発生。2017年夏に上海で事業を開始した2カ月後、中国政府は不正資金の国外持ち出しに利用されるとの懸念から、仮想通貨取引所を禁止した。
ジャオ氏はハイテク関連のバーチャル会議で、30人ほどのバイナンスのチームが荷物をまとめて日本に移動したと述べていた。2018年には、日本の規制当局からも、認可を受けずに国内在住者の取引サービスを提供しないよう警告を受けた。
バイナンスはその後、特定の拠点に関する情報開示を停止した。ジャオ氏はスタッフは世界各地に散らばり、自宅から勤務していると話している。
証券取引所が各国・地域の規制当局から承認を受ける必要があるのとは異なり、バイナンスはどの国にも拠点を持たないと主張する単一の取引プラットフォーム「Binance.com」を通じて拡散している。日本の規制当局が警告を発した1年後の2019年時点でも、同プラットフォームには日本のユーザーからのトラフィックがあった(調査会社ザ・ブロック調べ)。バイナンスの広報担当はコメントを控えた。
2020年終盤には、SECがバイナンス・ドットUSに対して事業に関する詳細情報の提供を求めた。これにはユーザーのデジタルウォレット(電子財布)の管理者、仮想通貨の保管場所、バイナンス・ホールディングスとバイナンス・ドットUSの間で結ばれた取り決めの詳細などが含まれるという。元幹部が明らかにした。
バイナンス・ドットUSは2021年5月、ブライアン・ブルックス氏をCEOに起用した。ブルックス氏はトランプ政権時代に米通貨監督庁(OCC)の長官代行を務めた人物で、競合のコインベース・グローバルの幹部だった。
ブルックス氏は、米国の投資家から資金を調達することを目指した。そうなれば、独立取締役を迎えることになり、ジャオ氏の持ち分は希薄化される。元幹部によると、ジャオ氏はバイナンス・ドットUSの過半数株を所有している。
ブルックス氏はまた、ソフトウエアを中国からではなく、米国内で管理することを望んだという。ブルックス氏が就任する以前、バイナンス・ドットUSの社員は、米国内の顧客口座に関係するソフトウエアの修理を上海スタッフに依頼しなければならなかった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が電子メッセージの記録を確認した。元幹部らは、今年の夏時点でも、上海のソフトウエア開発者が米国ユーザーの電子財布に対応したソフトウエアのコードを握っていたと話している。
ブルックス氏は8月初旬、米国内の12の投資家から1億5000万ドル近くを調達する目前にあったが、新たな取締役員の選定を巡り、ジャオ氏と衝突した。内情を知る関係者が明らかにした。
ブルックス氏は、リードインベスター(主導的立場の投資家)が自動的に取締役ポストを得て、取締役会が独立取締役を選定すると考えていたが、ジャオ氏は人事に関する権限の維持を望んだという。関係筋によると、ジャオ氏はソフトウエアのプログラミング管理を上海から移管することにも二の足を踏んだ。
ブルックス氏は8月6日に辞任した。その後、法務・法令順守チームから複数の社員も去ったという。
バイナンスの広報担当は、同社の技術やデータは中国内にはないと指摘した。バイナンス・ドットUSの広報担当ミラー氏は「身元が特定できる米顧客の個人情報はすべて、バージニア州リッチモンド郊外のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のプラットフォーム上にある」と説明した。
またバイナンス・ドットUSは目下、追加資金を調達しており、新たな投資家を取締役2人に任命する計画だとし、彼らが米国での新規株式公開(IPO)に向けた取り組みについて一段の監督を担うと語った。ジャオ氏は2024年までのIPO実施を目指していると話している。
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